こんにちは!星宮りょうです。いつもコラムを読んでくださって、ありがとうございます。
タロットカードの世界に少し足を踏み入れると、「秘密結社」や「魔術」といった、なんだかミステリアスで少し怪しげな言葉に出会うことがありますよね。特に、ウェイト=スミス版タロットを語る上で、イギリスの秘密結社「黄金の夜明け団(Hermetic Order of the Golden Dawn)」の存在は欠かせません。
今回は、少し歴史のベールをめくって、タロットと秘密結社、そして作者ウェイトの人生がどのように交差してきたのか、その奥深いストーリーをお話ししたいと思います。
魔術と神秘の探求「黄金の夜明け団」
- 西洋オカルト・魔術・錬金術・占星術を総合的に研究した秘密結社
- ユダヤ教神秘思想「カバラの生命の樹」とタロットを体系的に結びつけた
- ウィリアム・バトラー・イェイツ(詩人)など著名な文化人も在籍
- タロットを「宇宙の真理と魂の成長プロセスを示す地図」として研究
- 創設メンバーにアーサー・エドワード・ウェイト、絵師パメラ・コールマン・スミスも所属
19世紀末のイギリスに誕生した「黄金の夜明け団」。当時、タロットカードはまだ単なるゲーム用カードや、シンプルな占い道具として扱われることが多かったのですが、彼らは違いました。タロットの中に宇宙の真理や人間の魂の成長プロセスが隠されていると考え、占星術やカバラの生命の樹といった複雑なシステムとタロットを完璧に結びつけたのです。
0 — 愚者
I — 魔術師
II — 女教皇
X — 運命の輪
XXI — 世界
ウェイト=スミス版の生みの親であるアーサー・エドワード・ウェイト、そして絵を描いたパメラ・コールマン・スミスも、この結社に所属するメンバーでした。彼らが学んだ膨大な魔術的・神秘学的な知識がベースにあるからこそ、ウェイト版のタロットはあれほどまでに深く、象徴的な意味を持っているのです。
二人の創造者
アメリカ生まれ、イギリスで活躍した神秘学者。黄金の夜明け団に加入後、カバラ・薔薇十字・魔術・錬金術など西洋秘教のほぼすべての分野を研究した稀有な人物。1909年にパメラ・コールマン・スミスとともにタロットを制作。後に自ら「薔薇十字友愛団」を設立し、キリスト教神秘主義に基づく精神的な探求へと向かった。
ジャマイカ生まれのイギリス人芸術家。「ピクシー」の愛称で親しまれた個性的な人物で、版画・水彩・舞台美術など多方面で活躍。黄金の夜明け団に加入後、ウェイトの指示のもとウェイト=スミス版タロット全78枚の絵を描いた。小アルカナの数札に初めて人物や情景を描き込んだことで、タロットの表現力を根本から変えた革命的な芸術家。
魔術から「祈り」へ――魂の転換
しかし、ウェイト自身は次第に、結社の中で主流となっていた「魔術を使って現実を変える」「オカルト的なパワーを追求する」といった方向性に疑問を抱くようになります。
オカルト的なパワーの追求
儀式と呪文による支配
キリスト教神秘主義
静かで内面的な精神の探求
やがて黄金の夜明け団が内部対立などで分裂していく中、ウェイトは自らの理想を追求するため独自の道を歩み始めます。そして後に「薔薇十字友愛団(Fellowship of the Rosy Cross)」という新しい組織を主導していくことになるのです。
あなたの心を照らす「癒しのタロット」として
このウェイトの心の変化、魔術からキリスト教神秘主義への傾倒こそが、ウェイト=スミス版タロットが今日これほどまでに世界中で愛されている最大の理由だと私は考えています。
もし彼が純粋な魔術師のままであったなら、カードの絵柄はもっと難解で、一般の人には近寄りがたいダークなものになっていたかもしれません。しかしウェイトは、黄金の夜明け団の複雑な魔術的要素をそのまま描くのではなく、それを「人間の普遍的な魂の旅」や「神聖な愛と導き」という、誰もが共感できる温かい光のメッセージへと昇華させました。
だからこそ、ウェイト版の絵柄はどこか聖書の物語や教訓劇のようであり、私たちの心に深く、そして優しく響くのですね。
XVII — 星
XX — 審判
XIV — 節制
XIX — 太陽
星・審判・節制・太陽——これらのカードに描かれた天使や光は、魔術の記号ではなく、ウェイトが辿り着いた「神聖な愛と魂の救済」への祈りが込められています。
タロットは、決して怪しい黒魔術の道具ではありません。それは、ウェイトという一人の探求者が、魔術の奥底に見出した「祈り」と「魂の救済」の結晶なのです。
カードを展開するたびに、そこにはあなたを導くための神聖な光が宿っています。先人たちが残してくれたこの美しい叡智の鍵を使って、これからも皆さんの心の扉を開くお手伝いができれば嬉しいです。